メンタルアカウンティングで仕事を辞めるべきか判断する【人間心理と仕事について】

  • 2019年10月17日
  • 2019年10月17日
  • コラム

行動経済学者のリチャードセイラーはメンタルアカウンティングという心理的事象を始めて考察した人物です。

メンタルアカウンティングとは、心の会計と呼ばれているもので、

私たちが日々の生活を送るために心理的にさまざまなアカウント(勘定)を使い分けることをいいます。

例えば、お金の使い方で言えば、【食費】【交際費】【貯金】などと種類分けをし、

それぞれにいくら使えるか、頭の中で金額をはじき出す行為です。

みなさんも身に覚えがあるのではないでしょうか。

 

今回は、このメンタルアカウンティングと仕事の結びつきについてお話ししていこうと思います。

メンタルアカウンティングとは

冒頭でお金の使い方でメンタルアカウンティングを説明しましたが、

今度は他の例で考えていきましょう。

 

AさんとBさんは、ひいきにしているバンドのライブを鑑賞する予定を立てていました。

Aさんはライブチケットを5,000円で入手しました。

Bさんはチケットを友達から運よくもらうことができました。

ライブ当日、AさんBさんともに高熱を出してしまいました。

 

さて、重い体にムチ打ってライブに行く可能性が高いのはAさんでしょうか。Bさんでしょうか。

答えは明確です。

 

Aさんですね。

 

この現象はメンタルアカウンティングが発動しているといえます。

冒頭の例で言うと、すでに【遊興費】として5,000円のコストが発生しているAさんは、

それに見合うだけの行動、つまりライブに行くことで会計の帳尻を合わせようとするのです。

 

しかし、従来の経済学の観点からはこの行動は否定されます。

経済学では、チケットにかけたコストと熱をおしてライブに行く行動はまったく違う別の事象としてとらえます。

どの道チケット代が取り戻せないのであれば、ライブに行こうが行くまいが関係ありません。

 

この回収不能のコストのことを埋没費用(サンクコスト)といいます。

この場合考えるべきだったのは、

「もし、無料でチケットを手に入れていたとしてもライブに行く価値があるか?」

を検討し、答えがYESだったら行くべきだったのです。

サンクコストを深堀りしてみる

あなたは、ある資格をとるために専門学校に通いました。

学費は100万円かかりました。

数年勉強しましたが、残念ながら試験は不合格で今後の合格の見通しも立ちません。

あなたは、ここでスパッと資格をあきらめることができるでしょうか。

 

現実はなかなか難しいかと思います。

メンタルアカウンティングが発動し、すでに投じた金額と時間というサンクコストにとらわれて、

前に進むしかなくなり、さらにコストを投じる結果になると予想できます。

 

この状態のことを「サンクコストの錯誤」というそうです。

 

手取り14万とメンタルアカウンティング

仕事についても一緒ですね。

先日、ツイッター界隈で炎上していましたが、

「10年働いて手取り14万、日本終わってますよね?」

 

みたいな投稿がありましが、これもサンクコストの錯誤に陥っているのではないかと推測できます。

 

10年働いて14万ということは2年目も5年目もたいして変わらなかったはずです。

つまり、その時々のタイミングで他の道に軌道修正するチャンスがあったはずです。

少なくとも転職した方が良いかもしれないと考えるべき状況だったでしょう。

その状況を放置したときに考えたことのひとつに、

せっかくここまでやったのだからもったいないというバイアスがかかったと思うのです

しかし、このサンクコストの錯誤を打破し、別の道を選んでいたら結果は違っていたはずです。

 

また、メンタルアカウンティングの性質として、

人間はいつもと違う行動を起こした結果、悪い方向にいく場合

いつもと同じ行動で悪い結果になる場合では、前者の方が後悔しやすいことも分かっています。

簡単な例で言うと、いつもは行かないコンビニに行ったときに強盗に会い怪我をした時と

いつも行ってるコンビニで強盗に怪我をさせられた場合では、前者の方が後悔しやすいのです。

 

そういった経験は多かれ少なかれあるので、より行動に移せなくなります。

今回のツイッターの事例でも、

転職することが転機になることは分かっていても

転職したときに結果が悪かったら後悔してしまうのでためらったのかもしれません。

しかし、それでも動くべきだったのです。

選択しなかったもうひとつの過去は誰にも結果がわからないのだから、

損切りして現在と将来を変えるべきだったのです。

 

すべてのサンクコストの錯誤にさよならできたら、

手取り14万でがんじがらめになることはなかったでしょう。

 

まぁ個人個人いろいろ理由はあるからなんとも言えませんがね。。。

 

ホリエモンが、終わってるのはお前だ!と返したそうですが、同感です。

少なくとも投稿者は、ツイッターをやる時間もあるし、

おそらくスマホ代を支払える状態にあるのでしょうから、

 

その時間と金を自己投資に向けていれば10年積み上げて手取り14万でいることの方が難しいです。

 

会社と従業員の話

本筋とは少し離れますが、手取り14万の話ついでに会社と従業員の話をしようと思います。

 

まず、会社は従業員を守りません。

従業員という概念を守るのであってあなたという従業員はどうでもよい存在です。

いやそんなことはない!うちの会社は従業員を家族のように考えている!と反発される方もいるかもしれませんが、

それは、あなたが従業員と言う概念におさまっている場合にのみ適用されるのです。

 

大前提として会社は利益を出さないといけません。

利益を出さないと事業を展開し続けることができないからです。

 

その前提もしくはその範疇において従業員を守るのです。

あなたの個人的思想は会社にとって何の意味もありません。

あなたが会社に対して考えていることに意味があるのです。

つまり、あなたの考えが利益と結びつくか否かです

 

そこを考慮に入れず、会社は私のことを考えてくれない!と憤ってもしらけるだけです。

ツイッターの件にもどると、

会社は手取り14万円の従業員は守ります。(おそらく)利益が残るからです。

しかし、同じポジションで手取り30万の従業員は守りません。(おそらく)利益が出ないからです。

会社(または会社側の人間)は利益が出ることを前提において従業員を守る、という大原則を忘れてはいけません。

僕の話

偉そうに語っている僕ですが、実は僕自身、以前の職場ではサンクコストの錯誤満載で、

サンクコストの墓場と化していました。

 

勤めていた会計事務所を辞めて、経理として転職しましたが、ルーチンワークだけで毎日終電でした。

睡眠時間は3時間くらいで、

今だから言えますが、休日も会社に黙って仕事を持ち帰り一日中家で作業をしていました。

もちろん自分のやりたいことは何もできません。

 

当時の僕は、この状況は実力のない自分の責任だと思っていました。

そして、そのまま働き続けました。

一年くらい経ち、いつもの終電を待っている時

「ここでホームに飛び込めば今日帰らなくていいんじゃないか!そしたら明日から会社に来なくてOKだ!これは名案だ!」

と思い、飛び込む寸前までいきました。

今思い返すと恐ろしくなりますが、当時はこんなメンタルでした。

 

では、なぜここまでの状況になっても辞めなかったのでしょう。

いろいろ原因はあったでしょうが、その一つにサンクコストの錯誤がからんでいたことは間違いありません。

つまり、

▶いま辞めてしまったら

  • 会計事務所を辞めたのが痛手になる⇨会計事務所を辞めずに働いていた場合を想像し、損切りできなかった
  • ライブチケットの例のように転職活動の時間や労力を無駄にしてしまうと思った
  • 今働いている会社での実績が無駄になると思った

上記のように感じていたのです。

 

このままではダメだと思い、考え抜いた結果、働く日数を減らすことにしました。

そうです、パートになったのです。

週3~4日勤務にして残業も最低限におさえました。

そして、捻出した時間のすべてを自己投資にあてました。

具体的には、プログラミングの勉強と読書です。

プログラミングの勉強のおかげで、作業効率化のノウハウを一気に習得できました。

 

本も読みまくりました。現状を打破するために知識を深める良い時間になりました。

そして、読書をしている過程でメンタルアカウンティングに出会いました。

正直、パートになることはリスクが大きいと思っていましたが、

メンタルアカウンティングやサンクコストの考え方を学ぶことで自分の選択に自信が持てました。

 

それからしばらく自己研鑽し、当時働いていた会社では将来がないと判断し転職しました。

給与は大幅にアップしました。

今は、その会社も辞めて割と自由なポジションで生きています。

 

これからの僕はこのポジションもあっさり捨てることができます。

常に現在と未来に重きを置き、過去のサンクコストに見切りをつけられれば怖いものなしですからね。

 

それにしても経済学の考え方で人生が変わるとは面白いものです。

 

まとめ

世の中や自分の現状に不満があるなら、それに対し全力で抵抗してみるべきです。

その結果得たものを糧に次に進んでみたらいかがでしょうか。

何もせず不満を発信することしかできないのであれば、

これからは、耳と目を閉じ口を噤んで生きるべきです。

 

最後に、、、ある実験では、サンクコストの錯誤について説明を受けた人は、

以降の人生において損切りが速く的確になったそうです。

この記事を通してみなさんの意思決定に少しでも力添えできたら幸いです。